tetsu kato
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2009  Art Yuran in 展覧会レポート

"坐れない椅子の羅列" ギャラリー巷房2+階段下>

集積というのはそれだけでチカラを持つ。チカラといっても強さというよりも魅力。個体を超えるモノになるのだ。ギャラリーには針金でつくった椅子が行儀よく並んでいた。窮屈過ぎず、適度な距離を保ち、でもきっちり計って並べましたという感じではない。椅子の一辺は20cm程度のドールサイズ。

加藤哲さんはこれまでも綿棒を無数に接着するなど集積の作品制作してきた。彼がこだわるのは羅列。延々と続く単純作業を全く苦と思わない性分でなければ成立しない。ここは過去に何度か発表してきたギャラリーであり、周知しているスペースだけに場とのセッションはお手のものだ。「階段下」という小さなスペースは納戸のようなかなり変わった空間で、ここで発表するアーティストたちは巧みな演出をしていてハッとすることが多いが、加藤さんもまたしかり。隣のギャラリーでは黒い針金だったが、こちらでは水色の針金にして、奥の見えにくい部分からこちらへ椅子が行進して向かってくるように並べていた。

それにしてもなぜ椅子?
「会議室の椅子が並んでいる様を見て美しいと感じたことがありました。同じモノ椅子を並べると教室のような雰囲気も出る。一見同じようでいて、でもひとつひとつ違う椅子とその設置の仕方でそれぞれ個性があることを主張できる空間になると思いました」体制、枠組み、規律に対するささやかなレジスタンス。一律に見える穏やかな情景が小さな個で成り立っていることを示唆している。

椅子は作家がずっとこだわってきた四角の組み合わせであり、見る角度によってカタチが見え隠れする図形。目に映っていても見えていないことはもっとあるのだと、しゃがんで見たり横に移動して見たりして針金のドローイングを楽しんだ。

words:斉藤博美


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